顧客獲得単価(CAC)とは?計算方法とCPAとの違い、LTVとの関係を解説
更新日

新しい顧客を増やすとき、1人あたりいくらかかっているのかを把握できているでしょうか。
広告の数字は見ていても、人件費や制作費まで含めた本当の獲得の費用は、意外と分かっていないことがあります。マーケティングの担当者の方は、下記のような悩みを抱えていることも多いでしょう。
- 顧客獲得単価とCPAの違いがよく分からない
- 顧客獲得単価の計算に、どこまでの費用を含めればよいか迷う
- 獲得の費用が高いのか安いのか、判断の基準が分からない
サブスクリプションや金融商品のように、一度契約した顧客と長く取引が続く商品では、獲得の費用だけを見ると判断を誤ることがあります。高く見える獲得の費用が、実は十分に元の取れる投資だった、ということも起こるからです。顧客獲得単価の正しい計算のしかたと、顧客から得る利益と並べて考える見方は、セットで知っておく必要があります。
本記事では、顧客獲得単価の意味と計算方法、CPAとの違い、LTVとの考え方、下げるための方法を解説していますので、ぜひお役立てください。
この記事でわかること
- 顧客獲得単価は、新しい顧客を1人得るためにかかった費用のこと
- 計算は獲得にかけた費用の合計 ÷ 新しく得た顧客の数で、広告費だけでなく人件費なども含める
- CPAは施策ごと、CACは事業全体の効率を見るときに使う
- 長く使われる商品ほど、LTVと並べて獲得の費用が見合うかを判断する

顧客獲得単価は新しい顧客を1人得るためにかかった費用
顧客獲得単価は、新しい顧客を1人得るまでにかかった費用のことで、CAC(Customer Acquisition Cost)とも呼ばれます。
顧客獲得単価が分かると、集客にかけた費用が、顧客の増え方に見合っているかを判断できます。この数字から読み取れるのは、主に下記の3つです。
- 顧客を1人増やすのに、会社としてどれだけ費用をかけているか
- 集客の施策全体が、効率よく動いているか
- 獲得の費用が、顧客から得る利益に見合っているか
ややこしいのは、「顧客獲得単価」という言葉が、広告の成果1件あたりの費用であるCPAの意味で使われることもある点です。社内で話すときに、どちらの意味かを確かめないまま数字を比べると、話がかみ合いません。本記事では、会社として顧客を得る費用を表すCACの意味で解説します。
顧客獲得単価は費用の合計を新しく得た顧客の数で割って求める
顧客獲得単価は、同じ期間にかけた獲得の費用の合計を、その期間に新しく得た顧客の数で割って求めます。

計算の考え方はシンプルですが、どの費用を含めるかで数字が大きく変わります。たとえば、成果報酬やASPの費用といったアフィリエイトの費用も、新しい顧客を得るための費用として含めます。割られる数と割る数を、それぞれ以下のように定めておきます。
- 獲得にかけた費用の合計:広告費に加えて、制作費や人件費など獲得のためにかかった費用
- 新しく得た顧客の数:同じ期間に新しく契約した、または利用を始めた顧客の数
それぞれ詳しく解説します。
費用には広告費だけでなく人件費や制作費も含める
顧客獲得単価の費用には、Web広告の費用などの広告費だけでなく、獲得のためにかかった費用をまとめて含めます。
広告費だけで計算すると、人件費や外部への委託費が抜け落ち、実際より安く見えてしまいます。含める費用を種類ごとに分けると、主に下記の5つです。
| 費用の種類 | 例 |
|---|---|
| 広告費 | 検索広告、SNS広告、アフィリエイトの成果報酬 |
| 制作費 | LPや記事、広告のクリエイティブの制作 |
| ツールの費用 | 計測や顧客管理のツール |
| 人件費 | マーケティングや営業の担当者の工数 |
| 外部への委託費 | 広告運用やコンテンツ制作の委託 |
どこまで含めるかは、社内で一度決めたら、期間をまたいで同じ基準で計算しましょう。先月は広告費だけ、今月は人件費も込み、という数字を並べても、前の期間との比較はできません。上がったのか下がったのかさえ、読めなくなるからです。
顧客の数は申込ではなく実際に顧客になった数で数える
顧客獲得単価の顧客の数には、申込の件数ではなく、実際に契約や利用を始めた顧客の数を使います。
審査や商談がある商品では、申込のすべてが顧客になるわけではありません。商品によって、顧客として数える時点は例えば次のように変わります。
- 審査を通って契約した時点
- 口座を開設し、利用を始めた時点
- カードの発行を終えた時点
申込の件数で割ると、顧客獲得単価は実際より低く見えてしまいます。割る数が、顧客にならなかった人の分まで膨らむためです。どの時点を顧客とするかを先に決め、その時点の件数で計算するのが確実です。
顧客獲得単価(CAC)とCPAは数える範囲が違う
CACとCPAはどちらも獲得の費用を表しますが、数える費用と成果の範囲が違います。

CPAは施策ごとの効率を、CACは事業全体の効率を見るための数字です。数える費用、数える成果、使いみちの3点で比べると、違いは以下の表のようになります。
| 比べる点 | CPA | CAC |
|---|---|---|
| 数える費用 | 主にその施策の広告費 | 獲得にかかった費用の合計 |
| 数える成果 | 申込などの成果の件数 | 実際に顧客になった数 |
| 使いみち | 広告や施策ごとの比較 | 事業全体の効率の判断 |
どちらが正しいという話ではありません。広告の改善にはCPAを、事業の判断にはCACを使うと、それぞれの数字を正しく生かせます。
顧客獲得単価は長く使われる商品ほどLTVと並べて判断する
取引が長く続く商品では、顧客獲得単価をLTV(顧客生涯価値)と並べて判断することが大切です。

LTVは、1人の顧客が取引を続けるあいだに、自社にもたらす利益の合計のことです。顧客獲得単価だけでは見えず、LTVと並べてはじめて分かるのが次の3点です。
- 獲得の費用を、顧客から得る利益で取り戻せるか
- 取り戻すまでに、どれくらいの期間がかかるか
- 顧客獲得単価が高くても、力を入れるべき顧客がいるか
それぞれ詳しく解説します。
顧客獲得単価が高くても利益で取り戻せればよい
顧客獲得単価が高いこと自体は、必ずしも悪いことではありません。
カードやローン、口座のように取引が長く続く商品では、最初の獲得の費用が高くても、その後の利益で取り戻せることがあります。高いか安いかを決める前に、見ておきたいのは以下のような点です。
- 顧客から得る利益の合計が、獲得の費用を上回るか
- 取引がどのくらいの期間続くことが多いか
- 途中でやめる顧客がどのくらいいるか
顧客獲得単価だけで施策の良し悪しを決めると、長く利益をもたらす顧客を取り逃すことがあります。費用の高さで止めた施策が、実はいちばん利益を生む顧客を連れてきていた、ということもあり得ます。LTVとあわせて見る習慣をつけておくと、こうした見誤りを防げます。
取り戻すまでの期間も確かめる
LTVが獲得の費用を上回っていても、それで安心とは限りません。
獲得の費用は最初にまとめてかかり、利益はあとから少しずつ入ってきます。取り戻すまでの期間が長すぎると、そのあいだの資金の負担が重くなります。期間の面からは、下記の3つを確かめます。
- 獲得の費用を、何か月で取り戻せるか
- その期間、集客にかける資金を続けられるか
- 取り戻す前にやめてしまう顧客が多くないか
取り戻すまでの期間が長い場合は、無理に獲得を増やさず、続けて使ってもらう施策を先に整えるのも一つの方法です。獲得のペースは、事業の資金の状況とあわせて決めることになります。
顧客獲得単価を下げるには3つの見直し方がある
顧客獲得単価を下げるには、使うチャネル、申込の質、既存の顧客からの紹介の3つを見直すのが効果的です。
広告費を減らすだけでは、顧客の数も減ってしまい、顧客獲得単価はかえって上がることがあります。費用を削るのではなく、費用の使い方を変えるのが下記の3つの見直し方です。
- チャネルの組み合わせを見直す
- 審査や契約まで進む、質の高い申込を増やす
- 既存の顧客からの紹介を増やす
それぞれ詳しく解説します。
チャネルの組み合わせを見直す
同じ広告費をかけても、チャネルによって顧客になる人の数は大きく違うため、まずはチャネルごとに顧客1人あたりの費用を比べます。
比べた数字をもとに組み合わせを見直すと、全体の顧客獲得単価が下がります。組み替えるときの考え方は、主に次の3つです。
- 顧客になる人が多いチャネルに、予算を寄せる
- 成果に応じて費用が決まるアフィリエイトを組み合わせる
- 潜在層向けの施策は、将来の顧客づくりとして別に評価する
チャネルを比べるときは、顧客1人あたりの費用に加えて、ROASのような売上の面の数字もあわせて見ましょう。
質の高い申込を増やす
申込が大きく増えても、その多くが審査に通らなければ、顧客獲得単価は下がりません。
顧客の数が増えないまま、申込を集める費用だけが膨らむからです。効くのは件数より質で、審査や契約まで進む申込を増やす方法には以下のようなものがあります。
- 広告や記事で、条件や対象を正確に伝える
- 申込の前に、対象となる人を分かりやすく示す
- 申込の後の工程まで計測し、質の高い申込が多いチャネルを見つける
リード獲得の施策では、件数と質の両方を見ながら改善を進めましょう。
既存の顧客からの紹介を増やす
既存の顧客からの紹介は、広告よりも少ない費用で新しい顧客を得られることが多い方法です。
紹介で来た人は、すでに身近な人から評判を聞いているため、契約まで進みやすい傾向があります。ただし、仕組みを作る前に気をつけたい点がいくつかあり、主なものは下記の3つです。
- 紹介の特典が、表示や業法のルールに沿っているか確かめる
- 紹介しやすい案内や仕組みを用意する
- 紹介で得た顧客も、顧客獲得単価の計算に含める
金融商品や保険のように、紹介の特典に守るべき決まりがある商品もあります。始める前に、社内の法務の担当者に確かめておきましょう。特典の渡し方しだいで、表示や業法のルールから外れてしまうおそれがあるからです。
チャネルごとの費用の洗い出しから、顧客1人あたりの費用の下げ方までをまとめて見直したい場合は、Finfluenceのマーケティング支援でご相談を承っています。どの費用を含めるかの整理だけでもお手伝いできますので、お問い合わせからお気軽にご相談ください。
顧客獲得単価に関するよくある質問
ここでは、顧客獲得単価に関するよくある質問に回答します。獲得の費用を見直す際の参考にしてください。
顧客獲得単価の目安はありますか?
一律の目安はありません。
商品の利益の大きさや、取引が続く期間によって、見合う顧客獲得単価は大きく変わります。他社の数字と比べるより、自社のLTVと並べて判断するのが近道です。
顧客獲得単価はどのくらいの期間で計算すればよいですか?
月ごとに計算し、四半期や年でも振り返るのが一般的です。
申込から契約までに時間がかかる商品では、短い期間だけで見ると数字がぶれやすくなります。計算の期間と、顧客として数える時点をそろえておきましょう。
人件費はどのように含めればよいですか?
集客や営業にかかわる担当者の工数を、おおよその割合で含めます。
手順にすると、次の3つになります。
- 集客や営業にかかわる担当者を洗い出す
- それぞれが集客に使っている時間のおおよその割合を決める
- その割合の人件費を、獲得の費用に足す
厳密に計算することより、毎回同じ基準で計算することが大切です。割合の決め方は、担当者が替わっても同じ計算ができるよう、社内で文書にして残しておきましょう。
顧客獲得単価を下げると顧客の質は下がりませんか?
下げ方によっては、顧客の質が下がることがあります。
費用の安いチャネルに寄せすぎると、途中でやめてしまう顧客が増えることがあります。顧客獲得単価だけでなく、LTVや契約後の継続もあわせて見ながら判断しましょう。